第一章(前編)



児童1〜3 危なかったな、ジョー! 俺たちの仲間!
      
           と、ジョーに手を差し伸べる三人。
      
ジョー   またお前らか。何だ、その『秘密ハンター』ってのは?
      
           聞こえてくる『バビル2世』のイントロ!
      
ジョー   やめろって! 歌はいい、歌は!
児童1   今日、結成した。どうだカッコいい名だろう。俺たち『秘密ハンター』は、
      飛龍小学校最強の探偵チームを目指すぜ。
児童3   最強を目指すぜ。
児童2   同じクラスのよしみだ! 「どーしても」ってんならチームにいれてやるぜ、
      ジョー。
ジョー   ああ、そうかい。
児童1〜3 ………。
ジョー   ………。
児童1   (ジョーに)秘密ハンターに入るか入らないか。返事は五秒だけ、待ってや
      る。(ゆっくりと指を折りつつ)いち。にぃ。さん。しぃぃぃぃぃ。
      
           とうとう四まで数えた。
           決死の形相になる児童三人。
      
ジョー   五。
      
           と、代わりに数えて立ち去るジョー。
           慌てて三人の児童が立ちふさがる。
      
児童1〜3 ンガァーッ 
ジョー   入って欲しいんなら、言えよ最初から! 
児童1   入ってクレ! 
ジョー   断る。
児童2   入れ!
ジョー   入らん!
児童3   ハイレグ?
児童1〜3 ハイレー! ハイレチョビレー!
      
           と、謎の祈りをさざける3人組。
      
ジョー   何度言ったらわかる。俺は誰とも組むつもりはない。
児童1〜3 (祈りをやめて)エーッ。……緊急ミーティングだ!
      
           児童三人、集まる。
      
児童2   どういうことだ、エー、リーダー!
児童3   どういうことだ、エー? 
児童1   何がだ!
児童2   チーム名を変えりゃあ、ジョーはパツイチで飛び込んでくるって、言っただ
      ろ!
児童3   言ったぞ!
児童1   俺は、前のチーム名じゃあカッコ悪過ぎて誰もチームに入りたがらねえって
      言ったんだ。奴がパツイチで入るなんて言ってねえぜ。
児童3   言ってねえバカ!
児童2   何ィ! 『レッツ見つけるズ』のどこがカッコ悪過ぎんだ!
児童1   カッコ悪過ぎるだろ、どこから見ても!
児童3   (興奮して叫ぶ)ウギャオォォッ!
児童1・2 やかましィ!
      
           児童2、やにわに立ち上がり、
      
児童2   名を変えるだけじゃ、駄目だ。
児童1   じゃあ、どうすんだ?
児童3   イエーッ!
児童2   プラス・アルファが要る。
児童1・3 プラス・アルファ!
児童1   地球上の物資か?
児童2   ズバァーッ。(児童1を斬り捨てる)
児童1   ウギャアーッ。
児童2   つまり! …何か奴にとって有利な条件を付けるんだベシ!
児童1・3 えーっ。
      
           ジョーに向き直る児童2。
      
児童2   おめでとう、ジョー。
ジョー   なにが。
      
           もう、イヤになっているジョー。
      
児童2   今日からお前が、秘密ハンターのリーダーだ!
児童1   なにィィィィッ?
      
           リーダーの地位を勝手に奪われて抗議に向かってくる児童1を、
           児童2、
      
児童2   ズッバアアアアッ。
      
           と斬り捨てる。
      
児童1   ウギャアアア!
児童3   ああッ、元リーダーッ?
児童2   リーダーの言うことには、全て従いますぜ!
児童1・3 (あわてて)従いますぜ!
ジョー   ふうん。よし、じゃあ、リーダーの言うことは絶対だぞ。
児童3人  (してやったり)はい!
ジョー   整列!
児童3人  はい!
      
           驚喜して整列する3人。
      
ジョー   今日は、リーダーから、重要な発表がある。
児童3人  はい!
ジョー   我々秘密ハンターは今日をもって解散する。以上。
児童3人  (大ごけ)
      
           コケる3人を尻目に、立ち去ろうとするジョー。
      
児童3人  待てェ!
ジョー   まだ用があんのか。
児童1   …(児童2と3に)緊急ミーティングだ!
      
           集合する児童3人。
      
児童3   どうすんだ! 奴は地位ではつれない男だぞ!
児童1   違う!
児童2・3 えっ。
児童1   奴は、シンの底から探偵なんだ。
児童2   うむ!
児童3   ならどうすんだ。
児童1   ……噂を与える!
児童2・3 なるほど!
児童3   俺にやらせてくれ!
      
           児童3、ジョーに向き直る。
      
児童3   ジョー。
ジョー   何だよ、もう。
児童3   仲間になるなら、ジョー。とっておきの噂を教えてやるぜ。
ジョー   相手を見てものを言えよ、烏合の衆。お前らのとっておき位で、俺の誇りが
      買えるのか。
      
           トコトコ帰ってくる児童3。
      
児童3   買えそうにありません。
児童2   ズッバアアアア。
児童3   ギャアアアアッ。
児童1   ああっ。
児童2   見くびるなよ、ジョー。俺たちは、この飛龍広しと言えども誰も知らない、
      物凄い噂を知ってんだぜ!
ジョー   そいつを聞こう。
児童2   いいか。校長室の植木のジャリ石! その中に…
ジョー   その中に3つしかない青い石を持つ者は、パンチの力が倍になる……ってか。
      
           トコトコ帰ってくる児童2。
      
児童2   詳しく知ってはりました。
児童3   ズッバアアアアッ。
児童2   ウギャアアア。
児童3   食えーっ!
児童3人  パクパクパクパクーッ(と、児童2の内蔵食う)。
      
           もう、わけがわからない秘密ハンター。
      
児童1   だが!
      
           と、出し抜けに一歩出る児童1。
      
児童1   …その実物までは持っちゃいまい、ジョー。
児童2・3 まさか、リーダー?
児童1   キラリラリラリン!
      
           と、彼が高々と掲げて見せたのは、
           見ようによっては青く輝くつや消しの石。
      
児童2・3 おおおおおっ!
児童1   チョイハーッ! キャイオーッ!
      
           と、青い砂利握りしめてパンチ振り回す児童2。
           風が吹き、飛んできた蝶がコースを変え、
           鳴いていたセミが鳴きやむ。
      
児童2・3 アギャーッ!(恐れる)
児童1   ふおおお……。どうだジョー。仲間になるなら、この石を…
ジョー   キラキラキラリラリラキラキラキラリーンッ!
児童1   うぐぅッ?
      
           ジョーが取り出したその石は、
           明らかに、眩い青に輝くツヤツヤの石!
      
ジョー   お笑いだな、烏合の衆。お前の噂には、本体が欠けてるぜ。
児童1   ほ、本体って何だ、本体って?
ジョー   この噂の中心核は、「宝石の使い方の秘密」だ!
      
           一瞬、背中を向けたジョー、
           石を使って何かポーズをとったかと思うと、
      
ジョー   シュ!
      
           と、目にも止まらぬパンチを放つ。
           その威力は凄まじい。
           竜巻が起こり、飛んできた蝶は破裂し、
           鳴いていたセミは脱皮して謎の生物になって飛び去る。
           腰抜かしている児童3人。
      
児童1〜3 アギャオオオオオオッ 
児童1   ど…どど、どうやったんだ、今の! 教えてくれ!
児童2   教えてちょんまげ!
児童3   教えてたもーれ!
児童1〜3 ア・モーレ。ア・モーレ。
      
           謎の楽器掻き鳴らし、ダンスを踊り狂う3人組。
           しかし、すぐさま意気消沈。
      
児童1〜3 …ア・モーレ……。
ジョー   秘密さ。いいか、烏合の衆。ただ噂が欲しいだけなら、探偵なんてやめちま
      えよ。
      
           きびすをかえして立ち去るジョー。
           それを必死で呼び止める3人の児童。
      
児童1〜3 待てよ! 待ってくれ、ジョーッ!
      
           突如、紅蓮の炎が辺りを包む。
           爆炎熱風渦巻くその中心に、
           児童たちとジョーが駆け寄る。
           始まる、非情の組分けジャンケン 
      
全員    でえええええええええい!
      
           すぐに2つのチームが決定する。
           ジョー&児童2、そして児童1&児童3だ。
      
全員    ウオリャアアアアア!
      
           そのまま、ドッジボールが始まる。
           パワー対パワー、勇気対勇気の、
           弾丸の応酬が続けられる。
           やがて、ボールを手にした内野の児童1。
      
児童1   ウオオオオ! お前の腕が必要なんだ、ジョー!(ボール投げる)
ジョー   (かわした)くどいぜ! 秘密は自分の力でモノにしろ!
      
           ジョーがかわしたそのボールを、外野の児童3が手にする。
      
児童3   3年で5、6年の奴らに勝てるのは! お前だけだ、ジョー!(投げる)
ジョー   (またかわした)何で5、6年の奴らが関係ある 
児童1   (受け取る)とぼけるなよ、ジョー! お前が知らんわけがない! うおりゃ
      あああッ!
      
           児童1が渾身の力で投げたボールを、ジョーがキャッチした。
           ジョーが投げたボールを外野の児童2がとるが、
           彼はワザと敵チームに緩いボールを投げて協力する。
           このゲームは八百長だ!
           彼らがそのつもりなら、ジョーにも考えはある。
           始まるジョーと児童1の至近距離戦!
           両者ゆずらないが、
           やがてジョーの本気の一撃に、たまらず吹き飛ぶ児童1。
      
児童1   お前も狙ってるんだろう! くそ、また独り占めしようってのか! 汚ェぞ、
      ジョー!
児童2・3 そうだ、汚ェぞ!
ジョー   何の話だ?
児童1   だから、エメラルドの!
ジョー   エメラルド?
      
           その時、どこからともなく聞こえてくる、
           怪しげなオッサンの声。
      
声     …エメラルドやで〜。秘密の、秘密の、エメラルドやで〜。
全員     
      
           その声の主は、学校の塀の向こう側を歩いているのだ。
           絶対カタギとは思えない、インチキ臭さを満身に漂わせたその男。
           どうやらそれは、下校途中の小学生を狙った露天商。
           首からヒモで下げた木箱には、
           どう見てもガラス製の「エメラルド」がテンコ盛り。
      
露天商   エメラルドやで〜、秘密の、秘密のエメラルドやで〜。
      
           その声に耳と心奪われる児童3人。
      
露天商   はいはいはい、世にも珍しい、秘密の、秘密の、エメラルドやで……。
      
           露天商、売り声をこだまさせつつ、去る。
      
児童1   …………(かすれる声で)緊急ミーティングだ!
      
           集まる児童1〜3。
      
児童1   ……見たか?
児童2・3 …うむ。
児童1   ……聞いたか?
児童2・3 …うむ。
児童3   …買うたか?
児童1・2 …(黙って首横に振る)
児童1   エメラルドだ。
児童2・3 エメラルドだベシ。
ジョー   何だ、エメラルドって何のことだ? 新しい噂なのか?
児童1   ……そうかい、そこまでシラを切るんだな。
ジョー   …いや、俺は…
児童2   もういい! 俺たちだけでやってやろうぜ!
児童3   おうともよ!
      
           児童3、痙攣している。
      
児童2   あっ、どうした!
児童1   しっかりしろ! 生きるんだ!
児童3   武者震いだジョジョジョォォォ(失禁)、あっ。
児童1   ようし。この好機、逃さでおかん! いくぞ!
児童1〜3 秘密ハンター、ウオリャアアアアアアアッ!
      
           走り去る児童1〜3。






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